大学院工学研究科電子システム工学専攻の櫻井慶士さん、地域ひと・モノ・未来情報研究センターの酒井道教授らのグループが真空中で動作するIoTセンサデバイスの開発に成功しました

2021年3月31日

【概要】

大学院工学研究科電子システム工学専攻(副専攻ICT実践学座)の櫻井慶士さん、地域ひと・モノ・未来情報研究センター長の酒井道教授(工学部電子システム工学科)らは、株式会社魁半導体および株式会社チェッカーズとともに、真空装置内でも色情報を検出し信号処理可能で外部と無線通信可能なセンサデバイスの開発に成功し、その内容が英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載されました。サイエンティフィック・リポーツは、すべての自然科学分野を対象とした国際的学術雑誌です。IoT(モノのインターネット)技術としてもすぐに適用可能で、これまで投入困難とされてきた真空装置内で自立動作するエレクトロニクス・センサデバイスが実現しました。

【研究成果の内容】

真空装置は,大気圧よりも何桁も低い圧力状態を実現し、半導体デバイスを初めとした多くの微細加工に関わる工場内製造工程の心臓部となっています。しかし、これまでは真空という特殊環境下において使用可能な汎用センサは実現していませんでした。

当研究チームでは、センサ内使用部品について低圧力下でのガス放出やデバイス損傷の可能性などを慎重に調べて選定を行い、雑音対策などを施しました。そして、色彩情報の検出・データその場処理・無線通信が可能なシステムを構成し、数cmのケース1個分で,完全に独立した高機能センサデバイスを実現しました。さらに、実際に低圧力条件で生成されたプラズマ発光のその場直接検出に成功しました。このセンサにより、これまでは見ることのできなかった装置内部の死角部分の可視化が実現し、情報取得が不可能だった真空装置内部の詳細なデータ取得や見守りが可能となります。

現在、IoT技術等により、多くのセンサを製造工程装置の見守りに活用したり、蓄積した大量のデータ(ビッグデータ)により製造工程の状況・機器の故障予知等をAI(人口知能)技術で行ったりする手法が進んできています。この開発により、真空装置内部で取得可能なデータ量を飛躍的に増やすことが可能となり、AI技術等との組み合わせにより、稼働装置の高機能化・不具合や故障の予測等への応用も期待されます。

この研究開発は、地域ひと・モノ・未来情報研究センターにおいて、滋賀県東北部工業技術センターとも連携して、総務省の平成31年度戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「工業プロセス内隔離状態部への無線通信型色彩センサの投入による内部プロセス診断」等により実施してきました。

【成果掲載論文情報】

論文掲載先: https://www.nature.com/articles/s41598-020-80501-z

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本研究開発で実現した真空環境下で動作可能なセンサデバイスと従来技術との比較