ガラス工学研究センター山田明寛 講師らの研究成果がRoyal Society of Chemistry(英国王立化学会)の学術論文誌,Physical Chemistry Chemical Physics (PCCP) のHot PCCP Articleに選出されました.

2020年10月01日
 

概要:
ガラス工学研究センター山田明寛 講師が京都大学の研究グループ(上田純平 助教,田部勢津久 教授,原田昌也 氏(本学科2016年卒),宮野 隼 氏)と行った共同研究の成果が

Royal Society of Chemistry(英国王立化学会)の学術論文誌,Physical Chemistry Chemical Physicsに掲載され,2020年Hot PCCP Articleに選ばれました。

Physical Chemistry Chemical Physicsは化学・物理分野における国際的学術雑誌です。

【研究概要】

残光を示す材料は夜光塗料として誘導避難標識や時計の文字盤など広く利用されています.近年,我々の研究グループは,固体電子構造を基にした材料設計によって,Ce3+(発光中心イオン)を添加したY3Al5-xGaxO12(YAGG:Ce3+)系の残光蛍光体開発に成功してきました.また,固体電子構造は材料に印加する圧力により変化するため,YAGG:Ce3+蛍光体の残光特性が,圧力により変化することが予測されていました.

本研究では,ダイヤモンドアンビルセル(DAC)と呼ばれる高圧発生装置を用いて,異なる電子トラップ深さを有するYbおよびCrを添加したYAGG:Ce3残光蛍光体に圧力を加えつつその残光特性を「その場」で測定しました.圧力を印加すると,Yb共添加の試料では残光減衰速度が遅くなりましたが,Cr共添加の試料では残光減衰速度が速くなることが分かりました.これは,Yb共添加試料では,電子トラップ深さが浅くなり,Cr共添加試料では深くなったことを意味します.この圧力に対する異なる電子トラップ深さ変化は,結晶場非敏感の4f軌道電子がトラップ電子となっているYbと結晶場敏感の3d軌道電子が電子トラップとなっているCrの違いに起因しているが明らかになりました.

この残光特性の圧力変化は材料科学的な興味にとどまらず,圧力誘起による固体電子構造変化など基礎科学的な点からも興味を集めており,今後の更なる研究の発展が期待されています.

【研究題目】

(英文)

Pressure-induced variation of persistent luminescence characteristics in Y3Al5-xGaxO12:Ce3+–M3+(M = Yb, and Cr) phosphors: opposite trend of trap depth for 4f and 3d metal ions

(和文)

Y3Al5-xGaxO12:Ce3+–M3+(M = Yb and Cr)蛍光体における残光特性の圧力誘起変化: 4f,3d金属イオンにおけるトラップ深さの相反する傾向

Jumpei Ueda, Masaya Harada, Shun Miyano, Akihiro Yamada and Setsuhisa Tanabe

論文参照先: DOI: 10.1039/d0cp03520c

HOT PCCP Article 1

HOT PCCP Article 2

山田明寛 講師プロフィール


2013年から本学ガラス工学研究センターに所属(材料科学科兼務)

主な研究分野:地球内部物質科学、マグマ・ガラスの科学

主な研究内容、経歴等:

2007年愛媛大学にて博士号(理学)を取得。現職では、主にX線から赤外にわたる光の吸収、散乱を利用した構造データの取得や、ガラスの応力付加の構造、物性変化の解明など、ガラスの基礎科学から製造までに至る様々な問題に取り組んでいる。
また、山田明寛講師は、平成31年1月に愛媛大学との共同研究で「下部マントル最上部に玄武岩質の物質―沈み込むプレートの行方に関する研究」がNatureに掲載されるなど幅広い分野で活動している。